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Jerry Jeff Walker [Today's Album]

「Ridin' High / Jerry Jeff Walker」 (1975)
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Ridin' High

Ridin' High

  • アーティスト: Jerry Jeff Walker
  • 出版社/メーカー: MCA
  • 発売日: 1990/08/13
  • メディア: CD


良い曲を書けるってことは素晴らしい才能。それに増してその曲を自分で表現力たっぷりに歌う事が出来れば、尚更・・・。しかし音楽界には他人の曲を自分で書いたかのように、あるいは自分のために書かれたかのように歌いこなしてしまい、易々ととオリジナルを超えてしまう才能を持っている人が稀にだがいる。
70s' アメリカン・ソングライター・ファンにとっては神のような存在、Jerry Jeff Walkerもその一人だ。

Texasのミュージシャンとして語られることの多いJerry Jeffだが意外なことに出身はNew York。多くのシンガーが放浪を歌っているが、親指突き立てNew YorkからFloridaの最南端Key Westまで、また、バイクの荷台にギターを括り付けてカナダを横断と、実際に“Hobo-放浪生活”を送ってきた。

最初のレコーディングは時代柄サイケデリックなテイストも感じられるフォーク・ロック・グループCircus Muximumsの一員として67、68年と2枚のアルバムをVanguardに吹き込んだもの。
その後Atcoとソロ契約を交わし、アルバム「
Mr. Bojangles 」を68年にリリース。タイトル曲の「Mr. Bojangles」はNitty Gritty Dirt Band(彼らのバージョンは71年にシングルチャート9位まで上昇、日本のTVCMに使われたこともある。因みにJerry Jeffは68年の77位が最高位。)をはじめとして、Bob Dylan、Sammy Davis Jr.等あまりにも多くのアーティストにカバーされ、オリジナルより売れている物が多いため、彼の作品だと知らぬまま曲を好きになっている人も多いであろう。
その後曲は一人歩きしてしまい、Sammy Davis Jr.のダンスの師匠である Bill "Bojangles" Robinson
の事を歌った等、様々な解釈が成されているが、New Orleansで呑みすぎて監獄に入れられていたときに知り合い、人生について薀蓄を語り始めた酔っ払いのおっさんを歌った、という説が濃厚。
彼の書いた曲でMr. Bojanglesを超える曲はいくらでもあると思うのだが、ヒットに恵まれなかったために彼自身もその呪縛に取り付かれたのか、その後幾度と無くこの曲を吹き込んでいる。しかし私が思うにこのAtcoでの1st収録の物か、彼のNew York時代を支え、Dylanのサポートでも知られるDavid Brombergのギターが際立つ、Atcoでの2nd収録のテイク(録音は67年、Davidと二人のみ)を超えている物は無いと思われる。

まだ契約の残っていたVanguardに一枚のソロ作、Atcoにもう計3枚の作品を残してMCAと契約、Texasに移り住む。初めてTexasに足を踏み入れたJerry Jeffは“此処こそがホームだと感じた”と後に語っている。その理由はポップス化するNashvilleのカントリーシーンに飽き足らず、独自のスタイルでカントリーを歌うWillie Nelson、Guy Clark、 Townes Van Zandt、Waylon Jennings等、志を同じにするプログレッシブ・カントリー・シンガーの隠れ家であったからであろうか。

長い放浪の末、心の故郷を探し当てたJerry Jeffは、後に彼のバック・バンドであるLost Gonzo Bandの一員となるRobert Livingston、Gary P. Nunn等のタイトなサポートを得てようやく本領を発揮し始める。
いずれも素晴らしい内容の「Jerry Jeff Walker」「
Viva Terlingua 」「Walker's Collectibles」に続くMCA移籍後4作目。

収録の10曲中、自作は2曲のみ。しかし冒頭で述べたように、この人にとってそんなことは全く関係がない。歌唱力だけに焦点を当てれば彼以上の人は吐いて捨てる程いる音楽界。他人の歌を歌いこなすにはそれ以外に、自分にあった曲を選ぶセンスとその曲が何を言わんとしているのか理解する力、表現力が求められる様に思えるが、実際の放浪生活で多くの物事を目にしてきた経験が他人が書き上げたストーリーをリアルに歌い語る能力を与えたのである。

大切なオープニングであるにも関わらずバック・バンドのRobert Livingston、Gary P. Nunn共作による思わず踊りだしたくなるような陽気なカントリー・ナンバー①「Public Domain」を取り上げ、度量の大きい男であること示す。
②「Pick Up the Tempo」もタイトルどおりにノリのよいWille Nelson作のカントリー・ナンバー。正直、こちらの演奏を聴いた後ではWillieのテイクを聴くとスロー・ダウンせざるを得ないほどご機嫌。
家族ぐるみの付き合いである盟友Guy Clarkの名曲③「Like a Coat From The Cold」は、ピアノとアコギで淡々と歌うGuyのテイクも捨てがたいが、オルガン、管楽器も加えたバックにJerryが太く温かみのある声で歌うこちらに軍配。
④の自作曲、「I Love You」は語りかけるように歌いだすシンプルでスローなラブ・ソング。いい曲書けてるよ!
⑤の「Night Riders Lament」はMichael Burton(勉強不足でこの人については何も知りません!すいません!ご存知の方いらっしゃったら教えてください!)作の、一人ナイト・シフトで牛を追うカウボーイの悲哀を歌った美しいカントリーワルツ。故郷の友人達は主人公に“何故そんな安月給で人里はなれたところで過酷な仕事をするのか?”と問いただす。彼は答える、“夜中のオーロラを見たことがあるのかい?、風に舞う鷹を見たことがあるのかい?”と・・・。
⑦「Mississippi You're On My Mind」は言わずと知れたMississippiが生んだソングライターJesse Winchesterの名曲。ベトナム戦争に反対し、徴兵を拒んでカナダに渡ったJesseの望郷の念を此処ではJerry Jeffが熱く代弁。

囁いて良し、ガナっても良し、力強く優しいJerry Jeffのヴォーカルが他人の作品に新しい息吹を吹き込んでいる傑作アルバム!

65歳になったJerry Jeffは今も現役で活動、相変わらずの力強い歌声には驚かされる。



Video 「Mr. Bojangles」
まるで映画に出てくるようなイヤらしいキャラの司会者の質問に、苦笑しながらも、はにかみ、真摯に答えるJerry Jeff!

 

Video 「L.A. Freeway」(Composed by Guy Clark)


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