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Dwight Yoakam 「Dwight Sings Buck」 [Today's Album]

「Dwight Sings Buck / Dwight Yoakam」 (2007)
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Dwight Sings Buck

Dwight Sings Buck

  • アーティスト: Dwight Yoakam
  • 出版社/メーカー: New West
  • 発売日: 2007/10/23
  • メディア: CD


この人は決して帽子を取ってはいけない。
これほど帽子がなくなると人相が変わってしまう人も珍しいと思う。帽子を取ってしまっては二目と見られないようなルックスなのにSheryl CrowやSharon Stone、Charlize Theronなど彼と浮名を流した美人は多い。元来出たがりの性格が災いしてか、大作からB級作品まで無帽備にも、いや無防備にも映画に出まくりなのだが、情けない役、変質的に意地悪な役等を演じさせたらかなり上手いのだから困ったもんだ。

見ているほうが赤面するほどの派手なステージングと極端に鼻にかけたヴォーカルで色物扱いされているDwight Yoakam。しかし彼こそが既存のカントリー・ミュージックにエレクトリック楽器を大胆に取り入れ、West-Coast Rockにも通じる乾いたサウンドに爽やかなメロディが特徴的なBuck OwensやMerle Haggardが作り上げた"Bakersfield Sound"の継承者であり、GPが成し遂げようとしたRockとCountryそしてR&Bとの融合を今も実践している数少ない男だ。
生まれがKentuckeyということも有りBluegrassの影響も色濃く、その他ロカビリー、特にElvis Presleyへの傾倒も顕著であり、Elvis無しには彼の歌唱法は有り得なかったであろう。また、L.A.のポスト・パンク・R&Rバンド、The BlastersやX等との共通項も多い。
彼の凄いところはロカビリーやポスト・R&Rのマニアックなファン層の支持を受けながらもカントリー・チャートにまで次々とヒット曲を送り込んだことだ。

彼が犯した最大のミスはデビュー以来バンマスにして、ブルース、カントリー、ロカビリーとあらゆるスタイルをこなすリード・ギタリスト、そしてプロデューサーと八面六臂の活躍を見せてきた腹心、Pete Andersonと前作より袂を分かってしまった事だ。この現代有数のテレキャス・ピッカーがいたために、“婦女子は腰を振るDwightに黄色い悲鳴を上げ、男子はPeteの繊細且つ力強いピッキングにむさ苦しいため息を漏らす”という構図が成り立ち、Dwightの音楽をNashvilleのコマーシャルなカントリー・ミュージックから数段上のルーツ・ミュージックへと引き上げていたのである。
我が家でもAustin City LimitsのDVDを見る時は相方は派手なアクションのDwightに釘付けになり、私は間奏時のPeteの指元をガン見して賞嘆の声を上げている。時折「間奏時にDwightは一番動いているのに何故カメラはギタリストに固定されるのだ!?」という八つ当たりにも似た罵声が飛びながらも、まあ夫婦円満、平和に鑑賞している。
どういう理由があったのかは分からないがPeteだけは手放してはならなかった。

DwightのBuckとの交友は古く、88年にStreets Of Bakersfieldをカバーした際、Dwightの熱烈な誘いによってついでにFlaco Jimenezまで交えての共演が実演している。
恐らく昨年の3月にBuckが亡くなった時以来このアルバムの構想はあったのだろう。今年になって偶然か、DerailersもBuckの曲ばかりを取り上げたアルバムをリリースしているのが興味深い。
前作の「Blame The Vain」ではPeteの穴をその筋では実績のあるギタリストKeith Gattisが埋めていたが今回はEddie Perezという人。まあ、普通に上手い人なんでしょうけど良く知りません。
ある意味Dwightの真価が問われるアルバムになるのかもしれない。

 1. 「My Heart Skips a Beat」
軽快で分かりやすいメロディの佳曲。やはりDwightのヴォーカルはBuck+The Kingといった感じだ。ギターも悪くないがちょいと粘っこく歪みすぎか。(Buck,64,#1Country Single)
 2. 「Foolin' Around」
続けざまにBakersfield Sound特有の元気のいいホンキートンク・ナンバー。全く違和感がないのは普段Dwightが作り上げているサウンドへのBuckの影響が大きいことの表れだろう。(61,#2)
 3. 「I Don't Care」
(64#1)
 4. 「Only You (Can Break My Heart」
更にスローに更にネットリと歌い上げるDwightのヴォーカルが泣かせる。(65,#1)
 5. 「Act Naturally」
Buck Owensの名を知らない人でもこの曲を耳している人は多いと思う。カントリー・クラシックといってもいい曲。Loretta LynnやKitty WellsらのカントリーシンガーはもとよりBeatlesもカバーしていたのを思い出して10年ぶりぐらいにBeatlesのCDを自らプレーヤーに入れたがケツが青すぎの演奏で申し訳ないが聴けたもんじゃない。
ここでは割とオリジナルに忠実に演奏されている。(63,#1)
 6. 「Down On The Corner Of Love」
 7. 「Cryin' time」
 8. 「Above And Beyond」
(60,#3)
 9. 「Love's Gonna Live Here」
(63,#1)
10. 「Close Up The Honky Tonks」
GPの名唱でロック・ファンにも知られているこの曲をゆったりとした16ビートでオルガンまで加えてのアレンジ。
カバー曲のアレンジ・センスの素晴らしさにはいつも驚かされていたのだが、そこには少なからずPete Andersonの力があると思っていた。すいませんでした。いやぁ、これは良い!ロック的なリズムに乗せて緩めに唄うカントリーなヴォーカルが絶妙だ。
11. 「Under Your Spell Again」
オリジナルより強めにバック・ビートを刻むドラム、歯切れのいいテレキャスのサウンド。うーん、これぞ現代のBakersfield Sound!(59,#4)
12. 「Your Tender Lovin' Care」
(67,#1)
13. 「Excuse Me (I Think I've Got a Heartache)」
(60,#2)
14. 「Think Of Me」
今更ながらBuckの曲がとてもシンプルで美しいメロディ・ラインを持ったものばかりであることに驚かされる。
(66,#1)
15. 「Together Again」
これもカントリー史上に残る名曲。カントリー界では多くのアーティストがカバー。GPやEmmylou Harrisのバージョンはロック・ファンにもお馴染だろう。Dwightは少しメロディを崩した独特の唄いまわしを聴かせる。(64,#1)

結論を言います。素晴らしい!Buckも草葉の陰で後継者の敬意溢れる追悼盤の出来に目を細めて、そのメチャでかい鼻の穴を膨らませていることでしょう。

だけどもだけど・・・Peteに戻ってきて欲しい・・・・。


「Close Up The Honky Tonks」



「Act Naturally」 Dwight & Buck



「Streets Of Bakersfield」 Dwight, Buck & Flaco


「Mystery Train」 Dwight with Pete, Don Was & Kenny Arnoff!
Peteのテレキャス捌きは必見!


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コメント 6

てっくす

そういえばクラプトンがこの人のファンなんですよね。

僕は普通に映画を見たのち、クレジットを見て「あのハゲオヤジがドワイト・ヨーカム!?」と驚いた事があります。

>>Sheryl CrowやSharon Stone、Charlize Theronなど彼と浮名を流した美人は多い。
これは許せねえ!俺のシャーリーズ・セロンを・・・チクショー!

>>無帽備にも、いや無防備にも
面白いというよりも、見事な文才にこちらも脱毛、いや脱帽です。
by てっくす (2007-12-23 02:12) 

Mudslideslim

てっくすさん、どうも。

>そういえばクラプトンがこの人のファンなんですよね。
それは初耳でした。

>俺のシャーリーズ・セロンを・・・チクショー!
シャーリーズもてっくすさんのものでしたか。ノラちゃんやガッキーなどてっくすさんも多くの女性と浮名を流している色男ですね。

てっくすさんのところに全く興味のない音楽記事はないんですけど、Jazz物や南米関連は今は買い集める気はないのに文章の面白さに毎日読まされちゃってますよ。本とか出したら売れますよ・・・きっと。ここに一人は買う人いますから。一人じゃ赤字か?
by Mudslideslim (2007-12-23 10:42) 

torapanダンナ

こんばんわ。TORAPANダンナです。
実は、大好きなドワイトがこれまた大大大すきなバック・オウエンスのカヴァー・アルバムにもかかわらず、買っていない・・・・。マズイ・・・
買おうと思っていて、つい忘れてしまった。しかも、バック・オウエンスが去年まで生きていたことも、知らなかった。はずかしい・・・YOU TUBEの映像、競演してるのを観て久々に燃えてしまった。往年の声の張りは無いものの、存在だけでも十分スゴイ。「MYSTERY TRAIN」のPETE ANDERSON?(でいいんですか)のギターは、テレキャスとフルアコの違いはあるものの、テクニックや専門的なことは分からないが、ぼくみたいなオールディーズ・ファンには、リフがジョニー・バーネットっぽくて、メッチャカッコよかった。また、カントリー熱が再燃しそうで恐ろしい。
by torapanダンナ (2007-12-23 20:12) 

Mudslideslim

torapanダンナさん、こんばんは。
覚えていますよtorapanダンナさんがBuckのBox買っていたのを。
私は昔は同じBakersfieldでも完全にMerle派だったんで、偉そうなこと言っててもBuckは中途半端な編集盤数枚しか持っていないんですよね、実は。オリジナル作もボチボチ復刻されているようなのでこれから勉強したいです。
しつこい用ですけどBuckは鼻の穴でかいですよね。あの鼻から抜いた唄い方と関係があるのでしょうか・・・?
by Mudslideslim (2007-12-23 22:36) 

torapanダンナ

鼻の穴は、関係ないと思います。(笑)
ちなみにぼくは、MERLE&BUCK両方派です。
by torapanダンナ (2007-12-23 22:53) 

Mudslideslim

torapanダンナさん、再びありがとうございます。
私もDwightの本作を聴いてBuckのシンプルながらもキャッチーなソングライティングの素晴らしさは再認識させられました。
鼻の穴は関係ないですか・・・。
by Mudslideslim (2007-12-24 09:47) 

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