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2009 Best Album (New Releases) [Best Album of The Year]

眩暈や吐き気はかなり落ち着いてきていたし、全身の痛みについても今年の冬はわりと調子いいと思っていたら、このところの日替わりの天候と寒暖の差にはやられました。痛い~。 

すみません、すっかり時が流れてしまい、今更という感じですがアカデミー発表には間に合ったので許してください。

アカデミーといえば、今後変質者の役しか回ってこずに役者生命を終えるかとも思われていたJeff Bridgesが起死回生のはまり役(?)で受傷受賞したのは嬉しかったです。アバターが主要部門を逃したのも痛快。JeffとともにRyan Bingham & T-Bone Burnettが受賞したことも驚きました。Stephen Brutonも喜んでいることだと思います。
しかし、そのJeff主演の「Crazy Heart」は落ちぶれたカントリー・シンガーを描いたもので、Robert Duvall共演とのこと。同じくDuvallがオスカーを獲得し、落ちぶれたカントリー・シンガーを描いた「Tender Mercies」をどうしても思い出してしまうが・・・。


話がそれました。

今回は選出にとても迷いました。まず、20作品選び出し、全てレビューを書いたうえで5作品をレビューごと泣く泣く削除するという荒技を使い、ようやく15作品に絞り込みました。
例によって順不同ですが、大体上からという感じです。
それでは発表します。


 

Live in Europe [Analog]

Live in Europe [Analog]

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Lightning Rod
  • 発売日: 2009/10/13
  • メディア: LP Record

[Live In Europe] / James McMurtry
問答無用、出せばランクインのMcMurtry。本作は早くも2作目となるライブ・アルバム。収録曲8曲という中途半端な内容だが、なんとこのアナログ・バージョンを購入すると同じ内容のCDに加えて6曲入りライブDVDもついてくる!一曲目の「Bayou Tortue」からバリバリギターと震える喉で唯一無二の非情な空気感を醸し出しているのは流石。DVD収録の「Laredo」では作者のJon Dee Grahamが乱入、炎と氷のAustin競演は見ものだ。他人のライブでガハハ、ガハハと吠えまくり喋りまくるJon Deeとは対照的に、終始クールでニコリともせずに観客に礼を述べるMcMutryに痺れろ!DVDには往年の名曲「Too Long In The Wasteland」が収録されているのも見逃せない。踊りまくるオランダ娘は物珍しいから見に来ただけなのか、それとも真のMcMurtryファンなのか?スタジオ作に続いてIan McLaganも駆り出されている。


Written in Chalk

Written in Chalk

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: New West
  • 発売日: 2009/03/03
  • メディア: CD

[Written In Chalk] / Buddy & Julie Miller
申し訳ないのだけどJulieのリード・ヴォーカルはあまり好きじゃない。が、Buddyのリードに寄り添うJulieのハーモニーはいつ聴いても◎だ。彼女がリードをとっている曲を差し引いても、余裕のランクイン!前作から急接近したゴスペルの影響を感じさせ、深く重く響くBuddyのヴォーカルが荘厳な「Eliss Country」で幕を開ける。続く「Gasoline And Matches」は独特の揺れるギターも切れ味鋭いブルース・ナンバー。Julie作の佳曲「Chalk」、「Hush Sorrow」でBuddyのヴォーカル・サポートをするのは、なぜかそれぞれPatty GriffinとRegina McCrary、更にGeorge Jonesの名唱で知られる「Selfishness In Man」でもEmmylou Harrisと、共同名義の作品としてはJulieの役割が少なく疑問が残る。好き嫌いは別にして、Alison Kraussとの共演でアメリカーナづいているRobert Plantも「What You Gonna Do Leroy」でインパクトある歌唱を聴かせる。好き嫌いを別にしなければ邪魔くさい。


Losin' Lately Gambler

Losin' Lately Gambler

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: New West
  • 発売日: 2009/09/29
  • メディア: CD

[Losin' Lately Gambler] / Corb Lund
Corb Lund Band名義での作品もあるカナダのカントリー・ロッカーNew West移籍第一弾。切ないメロディとちょっぴり乱暴なヴォーカル、繊細なタッチのカントリー・ギターで我が家のへヴィーローテーションとなった「A Game Town Like This」は年度最高の負け犬ソング。郷愁溢れる「Alberta Says Hello」、ぶっきらぼうな語りが聴ける「Talking Vetrinarian Blues」、Tex Mex調の「Devil's Best Dress」、R&Rな「The Only Long Rider I Know」、Waylon調イントロの「Chinook Wind」等、作曲、アレンジの引き出しも多く、飽きることなく聴ける。獣医の息子という境遇が生んだと思われるオープニングの「Horse Doctor Come Quick」の切羽詰まった歌唱から、ラストのライブ・バージョンで収められた「Rye Whiskey~Time To Switch To Whiskey」まで、Corbの歌声には家畜と安酒場、孤独と放浪の影が色濃く染みついている。負け犬カナディアン・カントリーの傑作。New Westは偉い!


Shadow on the Ground

Shadow on the Ground

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Rounder
  • 発売日: 2009/09/08
  • メディア: CD

[Shadow On The Ground] / James Hand
こちらは元馬の調教師。アルバム数は少ないが、Willie Neslon、Ray Price、Ray Benson等大物たちのリスペクトを集める伝説的なベテラン・テキサス・カントリー・シンガー。一曲目「Don't Want Me To」のイントロ、唄い出しのしょっぱいヴォーカルでテキサス・カントリー・ファンなら狂喜すること請け合い。「Mona Lisa」でお得意の柔らかいトーンのリード・ギターを披露しているのはAsleep At The WheelのRay Benson。Honky-Tonkナンバーでの汗臭さも強烈だが、メロウな「Just A Heart」、「Midnight Run」でのむせび泣くヴォーカルも若造にはとても出せない哀愁を帯びている。ライナーで最大級の賛辞を送っているのはKris Kristofferson。Junior BrownやHacienda Brothers等ののアクの強いカントリー・サウンドが好みでHank Sr.のヴォーカルが嫌いでない方は是非御一聴を。Texas-Countryでは定評のあるLloyd Mainesのプロデュース作。


Haymaker!

Haymaker!

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Yep Roc
  • 発売日: 2009/01/06
  • メディア: CD

[Haymaker] / The Gourds
元々持っていたルーツ・ロック的要素に加えて、元WilcoのMax Johnstonがカントリー弦楽器を携え加入した頃から、更なる深みが加わり、ここ数作に至ってはその勢いはとどまるところをしらない。1曲目の「Country Love」は一聴カントリー・ロックなのだが、ヘンテコなタイミングのタムとブリッジ部のドブロ(?)の響きから、日本のどこかの民謡のようにも聴こえてくるから不思議だ。続く「Fossil Contender」もご機嫌でいてだらしない演奏が絶妙のロック。しかし、歌詞は相変わらず難解で、"Back Of My Head Smells Like a Kick Drum"ってどういうことよ?バンジョー、マンドリン、アコーディオンがリードする「All The Way To Jericho」、ピーヒャラオルガンの「Luddite Juice」、懐メロのような「Tighter」もお気に入りソングだ。本人たちはいたって大真面目に、顔を真っ赤にして叫んでいるのだろうが、どこか脱力させられるユルいヴォーカル、たこ坊主のようなルックスにも愛嬌がある不思議なカントリー・ロック・バンドだ。猥雑なB級っぽさを失わずに保ち続けてほしい。


Electric Dirt

Electric Dirt

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Dirt Farmer Music/Vanguard
  • 発売日: 2009/06/30
  • メディア: CD

[Electric Dirt] / Levon Helm
前作に続いて今回もスピーカーの向こうから泥の塊とともに入れ歯が飛んできそうな強烈なヴォーカル・パフォーマンスが聴かれるアルバムをリリースしたLevon。手術後の喉の調子は極めていいようだ。「Electric~」といっても特にエレキ楽器が前面に出ているわけではなく、「Dirt Farmer」同様の音作りで、まさに“土”を感じさせるアメリカン・ルーツ・ミュージックのオンパレードだ。オープニングの「Tennessee Jed」はGrateful Deadの曲。相変わらずの重たいドラミングも健在だ。Randy Newmanの「Kingfish」もストリングスを省いたアレンジで泥クサ度倍増にバージョン・アップ。Muddy Watersの2曲のブルース・ナンバーでの歌唱も凄い。前作のレビューで「エッジが多少減った」と書いたが、多少フガフガと聴こえるのは喉のせいではなく、入れ歯のせいだと本作にて確信した。喉は絶好調だ。どうでもいいことだがBest Traditional Folk Albumに続いてBest Americana Album部門で爺様Grammy連続受賞!


Gulf Coast Highway

Gulf Coast Highway

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Alligator
  • 発売日: 2009/03/24
  • メディア: CD

[Gulf Coast Highway] / Eric Lindell
彼のルーツがBlues, Soul, Funkであることは明白だが、思いっきりNew Orleans風のアレンジが施されてるとはいえ、Willie & Waylonの「I Can Get Off On You」、ソウル色が強いアレンジのBuck Owensの「Crying Time」、Delbert McClintonの「Here Come The Blues Again」等、カントリーにもかなり通じていることが垣間見れるカバー群が秀逸。もちろんファンキーなリズムとワウ・ギターの組み合わせの「This Love Is Gonna Last」、自演のハープも快調なシャッフル、「It's A Drag」等のブルースも収録。欲を言えばもう少しギターを弾いてほしいが、この人は唄うことが好きなんだろう。自作の歌ものソウル・チューンの「If Love Can't Find Way」、「Love And Compassion」も光っている。Blues、Soul、FunkそしてCountryまで消化した安定感のあるルーツ・ロック。インスト曲「Raw Doggin'」ではMetersの影もちらつく。


Bend in the Road

Bend in the Road

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Texacali
  • 発売日: 2009/09/22
  • メディア: CD

[Bend In The Road] / Mark Stuart And The Bastard Sons
The Bastard Sons Of Johnny Cashというベタなバンド名(Johnny Cashの使用認可有!)で活動していたMark Stuartが、心機一転製作したアルバム。1曲目のBilly Joe Shaverのこれまたベタなカバー「I'm Just An Old Chunk Of Coal」を聴いた瞬間、ストレートなカントリー演奏と歌唱に体がとろけそうになった。出すぎのオルガンとカントリーっぽくないエンディングのエレキのせいででダサいカントリー・ロックになりそうだが、伸びのある歌声のため一歩手前で寸止めの「Way Down The Road」もがオヤジの耳には心地よいし、アコーディオンが挿入された弾き語り調の「Lonestar, Lovestruck Blues」のまっすぐなヴォーカルには泣かされる。バック・ヴォーカルとしてTed Russell Kampの名も。この人はStacey EarlのパートナーのMark Stuartと同一人物ですよね?


Jason Isbell and the 400 Unit

Jason Isbell and the 400 Unit

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Lightning Rod
  • 発売日: 2009/02/17
  • メディア: CD

[Jason Isbell And The 400 Unit] / Jason Isbell And The 400 Unit
Drive-By Truckersのハッタリサウンドは好きになれなかったが、ソロになったJasonのサウンドは同じ轟音でも腰の据わった落ち着きがあるもので、オルタナ・カントリーが進むべき方向に進んだ好例といえる。オルタナ・スワンプとも呼べそうなオープニングの「Seven-Mile Island」に続き、“こんなに唄えるシンガーだったのか?”とさえ思えたソウルフルな「Cigaretts And Wine」と「No Choice In The Matter」、メラメラとした情念が感じられる歌唱と切ないメロ、爆音のバックが絶妙で、勝手に私が名曲と認定した「However Long」、Crazy Horseのような暴れんぼう演奏がかっこいい「Good」、「Soldiers Get Strange」、そして落ち着きのある「Streetlights」もよく、捨て曲がない。インストの「Coda」も重要な位置を占めているように聴こえる。オルタナ以降のロックに抵抗がないルーツ・ロック・ファンは聴くべし。Jasonの音世界を表現したようなカバーのイラストも素晴らしい。うーん、Truckersをあまり好きになれなかったのはPattersonのせいか?


Together Through Life

Together Through Life

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Columbia
  • 発売日: 2009/04/28
  • メディア: CD

[Together Through Life] / Bob Dylan
Dylanファン、Stonesファン、Beatlesファンにはマニアックな人が多く怖いので(経験ではDeadファンは寛容な人が多い、ていうか平和主義でぶっ飛んでいる?)、普段はあまり語らないようにしているけれど言っちゃいます。これはDylanのアルバム中、好きなアルバムベスト10、いや7には入るのではなかろうかという出来。声の枯れ具合も一時の聴き辛く細い八百屋声を通り越してドスが利いてきてよし。巷でも高評価ながら、古臭いとか、ルーツ指向とか言われているようだ。確かに、大まかにわけるとブルースかテックスメックスを基調とした曲ばかりだが、音作りに関しては、Daniel LanoisやT-Bone Burnett等に通じる幻想的な空間処理といい、ジャギジャギとしたエレキギターのひずみ具合といい、Jack Frostさんの感覚は洗練されてされていて古臭さを感じない。異論もあるかもしれないが、“起用でセンスがよく、時代の空気を先読みする才能に長けている”というのが自分のDylanの評価だ。作詞パートナーとしてRobert Hunterを起用。その他David Hidalgo、Mike Campbellが参加。


For a Second Time

For a Second Time

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Cedar Creek Music
  • 発売日: 2009/07/13
  • メディア: CD

[For A Second Time] / Daddy
それぞれの活動以外にも多くのアーティストのサポートを行ってきたWill KimbroughとTommy Womackが再びタッグを組んだ双頭バンド、Daddyのデビュースタジオ作。パーカッションとオルガンによるイントロが緊張感をあおるオープニングのソウルフルなアメリカン・ロック「Nobody From Nowhere」は文句なしにかっこいい。彼らのヴォーカルもまたいい感じの緩さがある。Stones風R&Rの「Early To Bed, Early To Rise」、はねたリズムの16ビート「The Ballad Of Martin Luther King」、トレモロ・ギターでCCRを彷彿とさせるスワンプ・ナンバー「Love In A Bottle」、セカンド・ライン・ビートの「Wash & Fold」とオープニングから一気に聴かせる。後半少々たるむような気もするのが少々残念だが、American Musicを裏で支え、知り尽くした男たちによる極上のアメリカン・ロックが聴ける。


One Foot in the Ether

One Foot in the Ether

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: BOH Records
  • 発売日: 2009/09/15
  • メディア: CD

[One Foot In The Ether] / The Band Of Heathens
前作の人選ミス(?)を踏まえてか、セルフ・プロデュースとなった2nd。相変わらずライブでの疾走感は今一つ伝わってこないが、アナログを意識したと思われるこもり気味で重心の低い音は1stよりは好みで、まとまりもでたように思える。前作と明らかに違う点は、外部のソングライターが参加した曲以外はすべてメンバー3人の合作とクレジットしている点だ。3人のコール&レスポンス(掛け合い)ヴォーカルで進行させる曲も増え、「Shine The Light」はタイトルからも想像できるようにゴスペル色が強い。ブルージィーでファンキーな「You're Gonna Miss Me」も強烈なスワンプ・ソング。その他Gordyが切々と歌う「Let Your Heart Not Be Troubled」、頭の中が大恐慌なGillian Welch & David Rawlingsによる「Look At Miss Ohio」、やっぱりThe Bandを思い出さずにはいられない「Talking Out Loud」、泥沼スワンプ「Golden Calf」、ラグタイムな「Right Here With Me」等聴きどころは多いのだが、2,3曲、はじけるような疾走感と若さを感じさせるが曲があったらアルバムとして文句なしだったろう。


Save Me, San Francisco

Save Me, San Francisco

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Columbia
  • 発売日: 2009/10/27
  • メディア: CD
[Save Me, San Francisco] / Train
訪米時にかかりまくっていた「Drops Of Jupitor」で彼らを知り、次作の「My Private Nation」まで購入。しかし、06年の「For Me It's You」は「この年でこんなロックを聴いていたら恥ずかしい」という理由でパス。久々に購入した本作では「Save Me San Francisco」、「Hey Soul Sister」とのっけから弾けんばかりのポップさと蟹江敬三似のヴォーカリスト、Pat Monahanのソウルフルなハイトーン・ヴォイスにやられっぱなし。しかも、3曲目の「I Got You」にはオヤジ殺しの仕掛けが・・・。メインストリームのロックというべき磨きすぎた音作りと時たま顔をだす荘厳なストリングスにはアルバム通して聴いていると流石に疲れてくるが…。いや~「You Already Know」もいい曲だ。Train史上最高に曲が充実したアルバムではないでしょうか?41歳の春なのに、こんな若向けロックを聴いていていいのでしょうか?


A Friend of a Friend

A Friend of a Friend

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Acony Records
  • 発売日: 2009/11/17
  • メディア: CD
[A Friend Of A Friend] / David Rawlings Machine
Gillian Welchのヴォーカル・パートナーとして、またギタリストやソングライターとしてRyan AdamsやJay Farrar等とも活動を共にしていたことで知られるフォーク・シンガーの満を持してのデビューアルバム。Epiphoneの小型のアーチトップがトレードマークで、J-50をもつことが多いGillianと並ぶとその立ち姿は滑稽でもあった。Welch同様、オールドタイミーなフォーク、カントリーが基本で、繊細且つか細い声で薄幸さを演出するフォーク・ソング「Ruby」でがっつりもっていかれる。Gillianとのハーモニーもこなれたもんだ。「To Be Young」はRyan Adamsが先に発表していた共作曲だが完全なフォーク・バージョンだ。カバーは2曲で、Coner Oberst(知らない)という人の曲とNeil Youngの「Cortez The Killer」をメドレーにしたものと、Jesse Fullerの「Monky And The Engeneer」だ。ドリーミーな「Bells Of Harlem」でのベルの音を模したドリーミーなウーリッツァーはBenmont Tench。頭の中が、自分が生まれる遥か前の大恐慌時代な変態シンガー。


Joy

Joy

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Jemp
  • 発売日: 2009/09/08
  • メディア: CD
[Joy] / Phish
このアルバムには賛否両論がありそうだ。変態サウンドが大好きなPhish-Headsには受けが悪いのかもしれないが、自分はPhish独特のグルーブ感に加えて、底辺にあるルーツ指向、時折顔を出していたポップ・センスが大好きだったので大満足な復活作だ。リズムの刻み方が摩訶不思議な「Sugar Shack」や13分を超える「Time Turns Elastic」等もあるが、1曲目の「Backwords Down The Number Line」はTreyの「Shine」の流れをくむ爽快でキャッチーなナンバー。ゆったりとしたリズムとスカスカのサウンドの「Ocelot」はGraterful Deadの影響が色濃く反映されている曲でJerryの声で唄われることが容易に想像できるほど。「Kill Devil Falls」もドライブ感あふれるシンプルなロック・チューンだが間奏部はスリリングでやはり聴かせる。“特殊なバンド”との認識が強く、敬遠していたロック・ファンも多いだろうが、一般のアメリカン・ロック・ファンにも受け入れられそうな作品。





The Worst Album Of The Year

Big Dreams & High Hopes

Big Dreams & High Hopes

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Big Machine
  • 発売日: 2009/08/25
  • メディア: CD
[Big Dreams & High Hopes] / Jack Ingram
前作を聴いたときから嫌な予感はしていた。なら買うなと言われそうだが買わなきゃ文句も言えない(Reissueでは買わず文句を言うこともあるが)。カントリー界ではメジャー・デビューしたものの商業主義に嫌気がさし、マイナー落ちしてから花開く連中も多いが、この人はその逆の例。今やJerry JeffやSteve Earleと共演していたころの面影(音影)はない。ポップかつモダン・ロックっぽいカントリーをやっているアーティスト(Keith Urban等)のアルバムとして聴けば決して悪いものではないのかもしれないが、これを聴かされてカントリーだと言われてもピンとこない。Patty Griffinを引っ張ってきてお茶を濁すが重症度が高く何の助けにもなっていない。そのイヤラシイ髪型もどうにかしろっ!坊主になって出直せっ!次がだめなら見放すぞ!


Wilco (The Album)

Wilco (The Album)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Nonesuch
  • 発売日: 2009/06/30
  • メディア: CD
[Wilco (The Album)] / Wilco
Wilcoには過去に裏切られていたので、内容が良かった前作も信用できずにああいう評価になったが、「そ~れ~見たことか~っ」という感じだ。吐き気がするほどではないが、“ここにこの音必要か?”と思われる効果音のようなサウンドといかにも切り貼りして遊んだらこんな曲できました的な不自然な進行が不快だ。こうなってくるとJeff Tweedyのいい年こいたファニーフェイスにまで腹が立ってくるから不思議だ。モダン・ロック・バンドのアルバムとしてはメロディにハッとさせられる曲もあるので悪くないものだとも思うが、中途半端なところをうろうろしてないで行くならさっさとそっち側に行っとくれ!内容よりも、ふらふらするバンドの態度に腹が立つ一枚。




総評

今回は選出にとても迷いました。Corb Lundの成長には目を見張るものがあり、James HandやMark Stuartと共にハードなカントリーを聴かせてくれたのが嬉しかったです。
次点となるのは、Tom Parr脱退以降の作品としてはベストと思える楽曲が集まり、久々のEric “Roscoe” Ambellプロデュースと、条件はそろったものの、“Roscoeともあろうものがまさかの軽すぎサウンド”になってしまい選外のBottle Rocketsの「Lean Forward」、”一人多重演奏バンド”というコンセプトは崩れたものの、再度カントリーへの愛情を示したJohn Fogertyの「The Blue Ridge Rangers Rides Again」あたりです。おばちゃん連中を従えたDave Alvinの「Dave Alvin and the Guilty Women」も地味ながら好感が持てたアルバムでした。

以下は十分及第点の出来ですが、ボスであるShooterは“やっちまった”感があるが、相変わらず堅実なスワンプSSW、Ted Russell Kampの「Poor Man's Paradise」、安定感ありすぎなSubdudesの「Flower Petals」、そして映画音楽も評価されたRyan Binghamの「Roadhouse Sun」に対しては、共に前作の方が好きだったので、フェアじゃないですが厳しい評価になりました。
特にRyanはまだ若く、ここで慢心して放浪魂を忘れられると大変なのであえて厳しく接します。

Charlie Robisonの「Beautiful Day、Sister Hazelの「Release、Radney Fosterの「Revivalは内容は悪くなかったけど、なぜか共通してデジタル臭く薄っぺらい音作り(流行か?)が災いしてボツ。
実はよく聴いていたJ.J.Caleの「Roll On」も「新鮮味がない!」との罵声が怖くて選外。
 
Steve Earleの長らく温めていたと思える企画盤「Townes」は、わりと変な味付けがない解釈には好感が持てました。しかし、好きなのはわかるが何せ相手が悪く、声質も生反対なので原曲のイメージに打ち勝てず惨敗、しかも喉の調子が悪そうなのも気になり、去年に限っては懐古趣味な息子Justine Townes Earleの「Midnight at the Movies」に負けているとさえ思えます。
紹介している作品とは趣が違う都会派SSWで、去年唯一買った女性アーティスト、Leslie Mendelsonの「Swan Feathers」は、疲れているときに聴き流すのに最適でよく聴きました。

わかる人にはわかると思いますが、カントリーというのはややこしいジャンルで、“カントリーが好きだ”というと日本国内はおろか、本国である米国でも誤解を招くことになるのであまり公言はしないのですが、自分はやはりカントリーが好きなので今年もハードでソウルフル、且つラフで生々しいカントリー系アーティストの好盤がリリースされることを望んでいます。

以上

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コメント 8

tex

いやあ、カントリー率が高くテンガロン・ハットが多いですねえ。有名どころ以外は、僕の知らない人ばかりでさすがと唸ってしまいました。
正直、アメリカン・ロック(カントリー、アメリカーナ)系のブツを漁るのは、かなりディープな所まで行かないと見つけられない上に当たり外れも多く、もう足を洗おうかと思っていたのでThe Band Of Heathensなどは無視していましたが、Mudさんの評価は上々なので聴いてみようと思います。Wilcoは今回は買うのを我慢したのですが、ワーストですか…。前作は大好きだったんですけどね。
総評を読んでも、やはり知らない名前ばかり。大変不謹慎ながらも「本当に闘病中なの!?」と思っちゃったくらい、精力的に色んなのをお聴きになっているんですねえ。

さりげない「41歳の春なのに」に★三つです!!
by tex (2010-03-11 01:12) 

substitute

こんばんは。楽しく拝見しました。
DylanのTogether...は、僕にはThe Bandと演っていた頃を彷彿させるモノがありました。Gの音とか、聴きようによっては、アコーディオンがGarth Hudsonのようだったり。
Electric Dirt、未聴ですが、Dirt Farmerに並ぶ盤だとしたらさぞ素晴らしいでしょう。先ほど、オーダしてしまいました。
The Blue Ridge Rangers Againは、個人的には大収穫でした。
Levon Helmも、John Fogertyも、Bill Monroeを彷彿させる声だと思っているので、入れ歯が飛び出すような歳になっても、"Dirt"な声を聴かせてくれる事を期待しています。
狭いながらも、コメントできる範囲で・・・
by substitute (2010-03-12 21:45) 

Mudslideslim

Texさん、返事が遅れて大変申し訳ありません!
今大変な時期なのにわざわざコメントくれてありがとうございます。
Texさんが、「アメリカーナの新譜をなるべく抑える宣言」をしていたのは存じております。残念ではありますが、他のジャンルにも興味だけはあるので興味深く読ませていただいています。
自分はこれでもアメリカーナ内で範囲をある程度絞り、かつ、ピンッとこないもの、情報が乏しい新人などは避けているつもりですが、確かに知らない人が見たら病気持ちのブログには見えませんよね。加えて経済的にもこんなことやってる場合じゃないのですが、時間だけはある上、理解ある相方のおかげで、リハビリがてらにCD漁りは続けています。
記事にも書いたとおり、BOHは一聴サラッとした音ですが、アナログっぽい(?)というか、でかい音で聞いても煩くない音作りで、ゴスペル色が強くなっています。後は、古臭く、泥臭い音が好きなTexさんに手放しでお薦めできるのは、「James Hand」ぐらいですかね。
Wilcoは、二人が気持ち悪くなったアルバム(多分同アルバム)に比べれば、全然聴けるものなのですが、感情的な理由でワーストとさせていただきました。
あ、あと、気がついていただいて助かりました。つっこみがなかったら寂しく自爆でした。
by Mudslideslim (2010-03-17 18:04) 

Mudslideslim

substituteさん、いつもありがとうございます。
返事が遅れて申し訳ありません!
90年代後半ごろから、Dylanはまさに何度目かの全盛期を迎えているような感じですね。的外れかもしれませんが自分は、アコーディオンやBoxオルガンを使用してのメキシコへの再接近に着目しているのですが・・・。
Fogertyは今回は僅差で落としましたが、前作の出来もよかったし、Dylanは別格としてもLevonと並んで若手や中堅に劣らないパワフルな作品をコンスタントに送りこんでくることには驚かされますよね。
by Mudslideslim (2010-03-17 18:14) 

matsuda76

相変わらず渋い選盤で感服いたします。
James Handが上位とは流石です!

Phishは暫く追いかけてなかったのでこの新作は聞いてみようかと思います。

更新楽しみに気長に待たせていただきます。
そして遅くなりましたが今年もよろしくお願いします。

by matsuda76 (2010-03-28 00:54) 

Mudslideslim

おおっmatsudaさん、お待ちしていました!本人でさえいつ更新するかわからないようなブログを見捨てずにいてくれてありがとうございます。
心境によってもかわるのでしょうがJames Handのスパイスの利いたむせび泣きはたまりませんでした。
matsudaさんもキャッチーなのは嫌いじゃないと思いますが、Phishは今までの作品の中でも一番キャッチーといっても過言ではないとおもいます。もちろん独特のグルーブ感はそのままに。
matsudaさんのリストも拝見させていただきましたが、Phishとは逆に私が最近離れていたBlack CrowsをTexさんともども推薦しているので、そろそろ出回る中古盤を狙います。それにGreat Lake SwimmersにZack Waltherとか私が名前すら知らない盤が入っていて唸らされました。どこで情報入手しているのでしょうか?
後、完全なミスがChuck Mead!どこかで聞いたことある名前と哀愁溢れるジャケに惹かれていたのですが、BRと直結しませんでした。くうっ、私としたことが…。これは買わねばなりませぬ。BRは解散したというわけではないのでしょうか?

こちらこそ、今後もよろしくお願いします!matsudaさんの忍耐強さに感謝しております。
by Mudslideslim (2010-03-28 19:45) 

matsuda76

James HandはMudさんのこちらのレビュー見て聞きなおしたんですが相当良いですね!
ん~この良さに気付かずスルーしているなんて我ながら情けない・・・(泣)

BRはちゃんと今もライヴこなしてるようですね。
早く新譜リリースして欲しいんですが。
ChuckのソロはBR的な陽性のロックンロールで良かったです。
Chris Scruggsの地味渋なソロも悪くなかったですが・・・。

Zack WaltherはLone Star Music見てて気になったのでオーダーしたんですが、全く期待していたかった分嬉しい誤算でした。
直接彼らのサイトから買ったらサインしてくれてたので更に好印象(笑)

Great Lake Swimmersは何故だかデビューから追いかけているんですよ。
私的には新譜良かったです。
でもバタ臭さ的なものは皆無で、Ray Lamontagneをもっとサラサラさせてような感じ?Ware River ClubとかHA HA TONKAとかWestern Statesとか・・その辺。

Phishオーダーしました!キャッチーなのは大好物ダス。

そういえばDave Matthews Bandはやはり選外なんですねぇ・・・
by matsuda76 (2010-03-28 22:36) 

Mudslideslim

matsudaさん、早速の詳細な回答ありがとうございます。
James Handは今のアメリカーナシーンでも流石年の功でひときわしょっぱいですよね~。
BRは解散したわけじゃないんですね。Chuckはなるべく早く入手したいです。
ZackはLone Starですか。あそこはこまめにチェックしていませんでした。Canadaものには思い入れがあるし、どうやら“寒い音”のようなのでGreat Lakeは気になりますね。先立つものがないので購入は先になると思いますが両者ともチェックさせていただきます。
久々のDMBは嬉しかったし、別に嫌いじゃないんですが何か曲自体が弱いですよね~。結果として同じ“久々Jam Band枠”ではPhishが勝った感じです。
他にも教えてほしいことが出てきたときには直メールするかもしれませんが、よろしくお願いします。
by Mudslideslim (2010-03-28 23:24) 

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