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James McMurtry 「Just Us Kids」 [Today's Album]

ある方がコメント入力時にどうしても画像認証されないと教えてくれたのでSo-netにクレームのメールを送ったら丁寧に画像認証機能を解除する方法は教えてくれたのですが、認証されないことに対しては何の説明も謝罪もありません。

おい、So-net、なめんな!飛んできて謝罪しろっ!
高尚な音楽お宅が集まるブログなのに貴重なコメントを不意にしてしまったかもしれないじゃないか!


「Just Us Kid / James McMurtry」 (2008)
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Just Us Kids

Just Us Kids

  • アーティスト: James McMurtry
  • 出版社/メーカー: Blue Rose
  • 発売日: 2008/05/12
  • メディア: CD

何だよ、この手抜きジャケットは!?でもMcMurtryなら許す。

相方に「あんたこの人を一番頻繁に聴いているよ。もうやめろ。」と言われるまでもなく自分でも相当聴きこんでいる自覚があり、デビュー以来一年に2~3度この人を集中的に聴く期間が必ずある。90年以降(デビューは89年)に出てきたアメリカンSSWで最も私に影響を与えた男である。前回はブログ・デビュー直後ということもあってサラッと流してしまったが、今回はもうチョイ掘り下げて・・・。

同じTexasのJon Dee Grahamと同じように今やTexasの裏ボスといった感が強いMcMurtry。Jon Deeも勿論好きなんですが、映画「The Last Picture Show」やTommy Lee JonesとRobert Duvalが演じる気性の全く違う2人のカウボーイの死をも乗り越えた友情を描いた「Lonesome Dove」の原作、そしてカウボーイの同性愛を描いた問題作「Brokeback Mountain」の脚本等、秀作の多い作家でシナリオライターでもある父Larry McMurtryの作品と共通するテーマである荒涼感、孤独感、哀愁、不毛、悲哀、無常感、虚無感という言葉で表せるような人間ドラマを父親とは別の手段=歌詞‐作曲-音作り、で描き出すJames McMurtryの世界に個人的にはまり込んでしまって抜け出せないでいる。

お世辞にも美声とは言えないが特徴的で鼻にかかったビブラート・ヴォイスと時には暴力をも克明に描き出すハードボイルドな語り口で“TexasのWarren Zevonの”異名(私が勝手に名付けた?)もとるMcMurtryはFort Worth出身で父親が書き上げた「Falling From Grace」の脚本をJohn Mellencampが主演、監督で映画化したのがきっかけでデモがMellencampの手に渡ったという。
Mellencampに見出されてデビューしたのは有名な話。共通点がないわけではないのだがデビュー・アルバムは80年代にヒットを連発していた頃の元気いっぱいで、汗臭く青臭いMellencampのサウンドからは連想できないほど渇いていて老成しており、一般的には迷走時代と捉えられているような90年代以降のMellencampが逆にMcMurtryから多大な影響を受けていたように思える・・・。

CBS、Sugar Hill、Compadreと渡り歩き、またも移籍でNashvilleのLightning Rodという新興レーベルからの最初の作品となる本作は通算では8作目のスタジオ・アルバムでありAustin録音のセルフ・プロデュース。
彼の世界を表現するにはトリオ編成でも充分なことは「Live In Aught-Three」で証明済みだが、おなじみのBassのRonnie JohnsonとDrumsのDaren HessによるHeartless Bastardsに加え、曲によってスタジオ・ミュージシャンやゲストを招いて制作されている。

 1. Bayou Tortous
 2. Just Us Kids
 3. God Bless America
 4. Cheney's Toy
 5. Freeway View
 6. Hurricane Party
 7. Ruby And Carlos
 8. Brief Intermission
 9. Five Line Road
10. The Governer
11. Ruins Of The Realm
12. You'd a' Thought

1. いつにも増して地を這うようなヘヴィーなオープニング。独特の飽和感があるバリバリとしたエレキ・ギターの音色は当然チューブ・アンプによるものだと思っていた。ところがFender VibroluxやVox AC15等のチューブ・コンボの名機も使っているようだが、メインで使っているのはLab Series L5というソリッド・ステート・アンプだと知って驚いたことがあった。どうやらB.B. Kingなどもこれを使っていたことがありその筋では有名なギターアンプらしい。間奏のインパクトがあるギターは恐らくC.C. Adcock。
2. タイトル・ソングは人生の後半に差し掛かったと男とその友人の姿を映画のように綴った感傷的なサビを持った曲。普通の人が歌えばかなりキャッチーな曲なのかもしれないがそう聴こえないのが素晴らしい。無骨なMcMurtryのヴォーカルを包み込む優しい音色のピアノはIan McLagan
3. 非常にヘヴィーなナンバー。今のアメリカの現状を痛烈に皮肉っているように思える。ブルージーなハーモニカはPat Macdonald(ex-Timbuk 3)によるもの。
4. 米兵を"Cheney's Toy"と斬り捨てる。引きずるように陰鬱なイントロからダルシマーが加わり中近東的な雰囲気をも醸し出す。間奏ではMcMurtryのギターが唸り、明後日のほうからトランペットが聴こえてきてラストは兵隊の号令のような掛け声がかぶさってくる。
5. バリバリとしたエレキのリフと転がり捲るIan McLaganのピアノが絶妙なアップ・テンポのブギー・ナンバー。普通なら“軽快な”と言いたい所だが、McMurtryの重たくだるい声で歌われると軽快な曲になり得ない。
6. 名曲「Where's Johnny」を思い出させる歌い出し。ハリケーンが無常に引き裂いたある男の人生。非常にMcMurtryらしさを感じさせる曲。
7. アコギの弾き語り調に悲しげなセロが彩りを添える。生活を共にしていた男女其々の視点で繊細な心の動きと詳細な情景の描写に引き込まれ、気づけば涙が頬を伝い男泣き。
8. 彼の特徴はあの声のはず・・・。インストなのに何故かMcMurtryの音だとわかるのが凄い。
9. 飲んだくれの父を持つ女性、その日暮の生活、動かない車、私の名前と顔を忘れて欲しい。足跡を残さずいつかここから立ち去るつもりだから・・・。マイナー調の曲に彼の醍醐味でもあるハードボイルドな語り口。McMurtryのカウントに導かれて絶望感に追い討ちをかけるかのようにあちらの世界から聴こえてくるラップ・スティールはJon Dee Grahamの仕業。ああ無情!

Jon Deeのようにパワフルなテキサス声も、Stephen Brutonのような切れ味鋭いテキサス・ギターも持たないが、兎に角、その情景描写は秀逸で、彼が表現したいことを楽曲化するのに充分な演奏力とセンスがを持ち合わせているのでこれ以上を彼に望む必要はない。
多少のプラスマイナスはあるにしろ、デビュー以来根本的に全く変わらないこの世界観。どこかの誰かみたいに金に物を言わせて実際に世界中を旅して回ったりしなくても、彼はデビュー以前に自分探しの旅を始めていて自分なりの価値観と歌うべきテーマを確立していたのであろう。

元々決してとっつきやすいタイプの音楽ではないのかもしれないですが、本作は取り上げられているテーマのせいもあってかいつもより更に陰鬱に聴こえるので初めて聴く人には80sっぽい音作りがちょっとだけ耳障りだが少しメリハリが利いているCBS時代から聴き始めてみることをお薦めします。新品でもかなりお買い得な値段になっていますよ。

蛇足ながら私は現在も陰謀と闘争中・・・。

来週は熱海の病院です。



「Cheney's Toy」



「60 Acres」 97年「It Had To Happen」収録

 
 

「Painting By Numbers」 89年「Too Long In The Wasteland」収録

「Down Across The Delaware」 95年「Where'd You Hide The Body」収録


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コメント 4

tex

こんにちは~

恥ずかしながらJames McMurtry は聴いた事がありません。というか、聴いてしまったらはまってしまいそうなので、わざと避けてきました。しかし、Mudさんの感想を読むと、この新作は聴かなきゃ損をしてしまいそうですね。
アマゾンでの発売は5月になっていますが、海外からの通販で入手されたのですか?

高宗なのにお宅。
お宅なのに高宗。
笑いました。。。
by tex (2008-04-26 07:02) 

Mudslideslim

Texさん、どうも!ちゃんとコメントがもらえて嬉しいです!

>海外からの通販で入手されたのですか?

私は日本のAmazonで新譜予約をしていたのですが本国での発売日どおり4/15に届きました。でも嘘のような話ですがAmazonのページでの表記が"James Mcmurty"とtの後の"r"が抜けた状態になっていたので見つけるのに苦労しました。現在でも"Mcmurty"で検索すると"在庫有り"になっていますよ。おいっ、Amzon、・・・・

>この新作は聴かなきゃ損をしてしまいそうですね。
この声を嫌いだとどうしようもないのですが、Texさんなら気に入っていただけるのでは・・・。色んな音楽を聴いているTexさんなら「おい、Mudslideslim、なめんな!こんな物薦めやがって!」とはならないと思います。
ブックレットに一緒に移っているJDGの超イヤらしい眼つきだけでも買いです!





by Mudslideslim (2008-04-26 21:11) 

substitute

こんばんは。
この人、恥ずかしながら知りませんでした。
記事を読んだあと、YouTube漁りまくりました。
イイですね! 相当気に入りました。
詞は分かりませんが、音の根本にロビ・ロバに通じるものを感じました。
ロビ・ロバがデジタル化せず、歌がもう少し上手かったら、こうなるんじゃないかな、と。
もしかすると、イマイチ上手く消化できなかった、ロビ・ロバの1stを理解できるようになるかも。
by substitute (2008-04-27 01:10) 

Mudslideslim

substituteさん、いつもありがとうございます。
自分にとって特別な存在のアーティストを気にいってもらえると嬉しいです。
聴き手に情景を思い浮かばせるような音作りの手法は確かにRobbie Robertosnと共通していると思います。彼は解散後は映画界に深く関わってきますからね。
CBS時代のアルバムは最近SONY/BMGよりお買い得な値段で出変わりましたし、中古も安価でよく見かけますよ。
by Mudslideslim (2008-04-27 19:37) 

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